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フィンランドのアキ・カウリスマキは好きな監督の1人です。社会の片隅でひっそりと暮らす冴えない人々を温かな視点で描き出す、味わいのある作品を多く撮っています(まだ全部観てないのですが
カウリスマキ作品は、台詞もシーンも最小限で無駄が無く、洗練されています。一見、地味で淡々としていてストーリーの起伏に乏しいように見える作品が多いのですが、小説のように何から何まで説明された映画とは違い、詩を読む時のような集中力が要り、その分酔うことができます。

やっと観られた5年ぶりの新作『ル・アーヴルの靴みがき』は、期待以上に素晴らしかったです。他の作品とは違って、この映画はTSUTAYAの「良い映画100選」みたいなコーナーに置かれていたくらいだから"一般受け”も期待できそうで、これから観ようと思っている人もたくさんいそうだからネタバレは控えます。よかったら予告編を観てみて下さい 相性があると思うけど、小津安二郎監督が好きな方には強くおすすめしたいです。

私の感想を少しだけ。
不法移民が隠れているコンテナの扉が開けられたシーンが素晴らしい。敢えて彼らに綺麗な服を着せフィクショナルに描いてあるので、彼らが「”処遇”を受けるべき困りものの移民」ではなく、尊厳をもった人間だという当たり前のことに、観る側は気づいてはっとするのです。
そのシーン以降は、全編を通して涙が流れっぱなし。優しいワケありの隣人達が素晴らしかったです